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2025.06.08

陸上日本インカレ十種競技で自己ベスト大幅更新の山本 初体験の「完ぺきなゾーン」とは

 スポーツ心理学では、アスリートが極度に集中し、最高のパフォーマンスを自然に発揮できる心理状態を「ゾーン」と呼びます。
 第94回日本学生陸上競技対校選手権大会の十種競技で自己ベストを255点も大幅に更新し、2位となった大阪体育大学の山本湧斗(体育学部3年、兵庫?明石商業)は「自分は確かに経験したことのないゾーンに入っていた」と10種目を闘った2日間を振り返ります。ゾーン下でアスリートはどのような意識になるのでしょうか。

山本湧斗



 山本は「自分の中で『行ける』という意識がどんどん湧いてきた」といいます。
 この気持ちは、6月6日、1種目目の100mをいきなり自己ベストの10秒89で走ってから生まれたのだといいます。2種目目の走り幅跳びも、追い風参考ながら7m44の自己ベストとなりました。4種目目の400mも自己ベストでした。一晩経ってもゾーンは抜けず、翌7日も2種目目はやや苦手だった投てき系の円盤投げでしたが、自己ベスト。3種目目の得意の棒高跳びではベストこそ出なかったが4m90で圧勝すると、苦手だったはずの4種目目のやり投げで自己ベスト。開始が午後9時15分にずれ込んだ最後の1500mも自己ベスト。200点以上もの自己ベスト更新は、試合から長期間離れた時を除いて一度もなかった異次元の結果だといいます。

十種競技2位の山本湧斗(左)。右は16位の大体大?三和龍之介(体育学部3年、徳島?富岡西)


 山本は「これまでもゾーンを感じたことはあったが、今回は完ぺきにゾーンに入ったと思った。初めてのこと」。ゾーン下での競技は「いつもよりも競技が楽しくなった」といいます。
 ゾーンが生まれた背景には、日本インカレに照準を合わせて練習し、「ドンピシャ」でこの大会にピークが来たことがあります。また、冬季練習で、高校時代はあまり練習せず苦手意識があった投てき系をしっかり練習したこと、パワーがついてきたことも理由です。

山本湧斗(資料写真)


 山本によると、十種競技の選手間には、所属を超えて独特の仲間意識と儀式があるのだといいます。2日間で10種目の過酷な日程を闘い抜いた選手同士が、ラグビーの「ノーサイド」の精神のように仲間としてたたえ合う。最終種目の1500mを走り終えた後、選手は全員で記念撮影をし、その後、輪になり、ランニングシャツを脱いで一斉に宙に投げ上げる。この儀式は日本インカレも関西インカレも変わりません。
 「十種競技の魅力は?」と問われて、山本は「選手一人ひとりに個性があること。自分は跳躍が得意だが、100mが速い選手、投てきに強い選手。同質ではなく、それぞれの強みを見てもらいたい。いろんなタイプの選手と闘うのがこの競技の面白いところ」と答えます。

 卒業後は高校で保健体育科教諭になるつもりだったが、5月の関西インカレで自己ベストを出すなど結果が出始め、「欲が出てきた」といいます。「この日本インカレの記録ではっきりした。もう少し競技を続けたくなってきた」
 7月の日本選手権では入賞を目指します。

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